IUGR(子宮内胎児発育遅延)

 …またはSGA(Small for gestational age)ともいいます

1. IUGRってなんだろう?…

2. なにが危険なの?…

3. 出生後の成長・IUGRに対する成長ホルモン治療の可能性…

4. ゆちゆちの場合…






1. IUGRってなんだ ろう?…

intrauterine growth retardation :IUGR(子宮内胎児発育遅延)

 …もしくはSmall for gestational age (SGA)

 胎児は、在胎期間に相応して発育します。正常では、その差はある範 囲に止まっていますが、なんらかの原因で子宮内での胎児の発育が抑制ま たは停止し、正常範囲を逸脱して発育が小さい場合、-1.5SD(SDにつ いては低身長のページを参照)以下のもの を子宮内胎児発育遅延(IUGR)といいます。IUGRは、全妊娠の3〜 7%に認められるといわれています。

 IUGRは大きくsymmetrical IUGR、asymmetrical IUGRの2つに分類されます。
 最近ではその中間型のcombined IUGRも含め3つに分類されることもありますが、いくつかの原因が絡み合って発症することも多く、はっきりとした原因がわからないことが多々あります。

  1. symmetrical IUGR:身長・頭部のサイズ も小さく全体としてバランスのとれた低体重児。先天奇形、先天性感染症、 染色体異常、胎児性アルコール中毒症、薬物中毒、喫煙、被爆の影響等が考えられます。また、遺伝的な IUGRもこのタイプになります。(※2005年7月、たばこの箱の注意文が厳格化されます。「妊娠中の喫煙は胎児発育 障害や早産の原因のひとつとなる」ことが明記されることになりました)
  2. asymmetrical IUGR:妊娠後期に発症し、頭部の大きさの割に体重の少ない(脂肪の蓄積が少ない)やせ形の低体重児。IUGRの約70%を占める。胎盤 機能 不全、妊娠中毒症、慢性高血圧、腎疾患、心疾患、膠原病、Graves病,糖尿病などの母体合併症、多胎妊娠等が考えられます。IUGRが慢性的な胎盤の 栄養不良によるものであった場合、出生後十分な栄養を与えられれば著しい成長を示し追いついていきます。
  3. combined IUGR:妊娠中期に発症する。早期発症型妊娠中毒症、薬剤、喫煙、アルコールなどが原因と考えられます。IUGRの約5〜10%を占め る。


2. なにが危険なの?…

 IUGRの問題は、体が小さいことだけではありません。IUGR児の1/3に、分娩前の胎児仮死の兆候がみられ、場合によっては子宮内胎児死亡につなが ることもあるといわれています。胎内での酸素の取込みが 悪く、慢性の酸素不足状態にあるため、分娩時のストレスにより容易に仮死状態を来しやすいのです。
 酸素不足から羊水中に胎便が排泄してしまい、あえぎ呼吸をして肺や気道に胎便などを吸い込んで、胎便吸引症候群(MAS)をおこすことも多く、周産期死亡は正常発育児の 6〜10倍。新生児期に低血糖、低体温、多血症などが問題になります。

 長期予後として,身体発育遅延,精神発達遅延などを伴うことがあるとされています。
 また、胎児期の低栄養が青年期以後の肥満、糖尿病、高脂血症、心血管系疾患や高血圧(いわゆる生活習慣病)の発症に関係していると言われています。

 追記:ただし、小さくうまれてきただけ で、何 の異常もなく、元気に育っていくIUGR児がほとんどであるということを、追記します。IUGRについて、このページにいろいろ心配なことを書いて ます。でも、何の異常もなく、生まれてくる赤ちゃんのほうがずっと多いです。出産前、小さいと言われた時、わたしもいろいろ 心配で涙した覚えがあります。情報の多い世の中、マイナスの情報も多く入ってきますが(そしてマイナスの情報をわたしも書いていますが…)、プラスの情報 がそれ以上に多いということを忘れずに、あなたのおちびちゃんを大切に育ててあげてくださいね。




3. 出生後の成長・IUGRに対する 成長ホルモン治療の可能性…

 IUGR児における出生後の成長は、病因、IUGRの期間や重症度、出生後の栄養、社会生活環境などにより影響されます。遺伝的要因、染色体異常が原因 のIUGR児では、出生後の環境を改善しても、catch-up growth(追いつくこと)はなかなか期待できません。
 一般的にIUGR児は食が細いことが多く、大きくなっても体重、身長が小さい傾向があります。IUGR児の80〜85%は2歳 時までにほぼ正常身長の範囲に達しますが、catch-up growthしなかった 低身長児は、小児期も低身長のままで、最終的には15〜20%のIUGR児が最終身長も低く終わりま す。その機序はまだよく分かっていません。

 IUGR児の低身長に対して、成長ホルモン治療が試みられています。IUGR児の約 33%に成長ホルモンの分泌不全が認められ、成長ホルモン治療により良好な結果が得られています。
 成長ホルモン分泌不全を認めないIUGR児にも、成長ホルモン治療を行い良好な結果を得たとの報告もありますが、現在のところ日本においては承認された 治療ではありま せん(臨床治験中)。一方、フランス(サノフィ・サンテラボ社)とアメリカ(ファルマシア社:2003年ファイザー社と合併)では、成長ホルモン分泌が正 常のIUGR児 に対して も、成長ホル モン治療が許可されています。2003年7月、EC(欧州委員会)でもcatch-up growthのみられないIUGR児にたいする成長ホルモン治療が承認されました(ノボ ノルディスク社)。今後EUの加盟15カ国の当局が各国で販売承認を出す予定です。

 しかし、IUGR児の低身長は多因子性で、成長ホルモンのほかソマトメジンC、インスリンなど多くのホルモンに抵抗性を示す症例があります。成長ホルモ ン治療の副作用の問題(思春期発来が早期になること、低血糖など)、蒿用量投与か通常量投与かについてなど、成長ホルモン治療にはまだまだ検討の余地、必 要があると考えられます。




4. ゆちゆちの場合…

 40週4日、満期産でしたが、2286g、45.0cmでした。全体的な体のバランスはよく、symmetrical IUGRでした。わたしも周囲も喫煙者はいませんでした。妊娠期間中、お酒はたま〜に飲んだ程度でした。妊娠中毒症もありませんでした。
 分娩時、胎便による羊水混濁があり、胎便吸引症候群(MAS)予防のため気管内洗浄を受けました。出生 後、先天性感染を疑いサイトメガロウイルスとトキソプラズマの検査をしてもらいまし たが、異常はありませんでした。
 今のところ、おちびちゃんであること以外、発達について心配なところはありませんが、2歳11ヶ月現在、85.3cm(-2.0SDにわずかに足りな い)です。まだまだ、身長の キャッチアップはしていませんね〜。




参考文献:
【検査に頼らないで診断するコツ】低身長 田苗綾子  小児科42巻4号 P.468-473(2001.03)
今日の治療指針2003年版 山口徹他編 医学書院
標準産科婦人科学 水野正彦監修 医学書院
【成長障害の診かたと対応】IUGRの成長歴 梅崎光他 小児内科35巻3号、P.409-412(2003.03)
子宮内成長遅延による低身長についてみた,ヒト成長ホルモンの成長促進効果及び安全性の2年間検討 OgawaMasamichi他 Clinical Pediatric Endocrinology8巻2号 P.67-75(1999.12)
子宮内成長遅延に伴った続発性小人症小児における,成長ホルモン長期治療の効果 ChaussainJ.L他 Clinical Pediatric Endocrinology6巻Suppl.10 P.123-127(1997.12)
よくわかる低身長児の診療ガイド 成長障害の診察室から 羽二生邦彦 医学図書出版




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