低身長
1.
低身長(成長障害)ってなんだろう?…
ちょっと背が低い、というのは低身長ではない場合がほとんどです。医学的に、次の2つの項目の両方あるいはどちらか片方に当てはまる場合、低身長
(成長
障害)の可能性があります。
- 身長が同性、同年齢のこどもと比べて「−2SD 以下」の場合
- 1年間の身長の増加(成長率)が、同性同年齢のこどもと比べて「−1.5SD以下」になり、2年間続く場合
※SDってなに?…
SDとは、標準偏差
(standard
deviation)のことです。あるデータのばらつきの程度を表します。この場合、こどもの身長のばらつきの程度を表します。
−1SD〜1SDには、全
データの約68%が含まれ、−2SD〜2SDには全
データの約95%が含まれると考えて下さい。すなわち、−2SD〜2SDの間に全体の約95%の子どもの身長が入ることより、「−2SD」以下の身長を低
身長と定義しています。
2. 低身長(成長障害)の分類…
病的でない低身長(治療の対象にならない)
- 家族性低身長…遺伝的なもの。親子の身長には相関関係が
あるので、両親の背が低い場合、子どもも背が低くなる可能性があります。
- 胎内発育不全性低身長…IUGR(子宮内胎児発育遅延)
でも低身長となる可能性があります。IUGR児の80〜85%は、2歳時までにほぼ正常身長に達し
ます
がcatch-up
growth(追いつくこと)しなかった低身長児は、小児期も低身長のままで、多くは最終身長も低く終わるといわれています。詳しくは「IUGR
(子宮内胎児発育遅延)のページ」を
みてね。
- 思春期が普通より遅いための低身長…いわゆる「おく
て」。高校生くらいで急に背が伸びて最終的には追いつくことが多いが、追いつかずに低身長で終わることもあります。女児より男児に多く、家系内にも「おく
て」を認めることが多い。
病的な低身長(治療の対象になる)
- 成長ホルモン分泌不全性低身長…成長ホルモンの分泌不全
によるもの。
- 甲状腺機能低下症低身長…甲状腺ホルモンの分泌不全によ
るもの。
- 愛情遮断症候群による低身長…虐待など、心理的な要因で
低身長をきたすことがあります。
- ターナー症候群による低身長…染色体の異常による。女性
にのみ起こる。ひとつの体質ととらえ、「ターナー女性」を使用する傾向になっている。
- プラダーウィリー症候群による低身長…染色体の異常によ
る。肥満、低身長。
- 軟骨無形成症、軟骨低形成症による低身長…軟骨の増殖が
先天的に障害されているため、骨が伸びず、低身長になります。手足が短いのが特徴です。
- その他腎不全、心不全など主要臓器の慢性疾患によるもの
- 低栄養によるもの、など
3.
低身長(成長障害)の治療法…
低身長には、治療の対象になるもの、ならないものがあります。治療の対象になるのは、主に上記の「病的な低身長」です。
その中でも、合成ヒト成長ホルモン剤による治療の対象になっているのは、成長ホルモン分泌不全性低身長、ターナー症候群、プラダーウィリー症候群、軟骨
無形成症、軟骨低形成症による低身長、慢性腎不全による低身長です。ただし骨端線がまだ閉鎖していないことが重要で、骨端線が閉鎖してしまうと背は伸びま
せん。また、成長ホルモン治療には厳しい適応条件があります。
甲状腺機能低下症による低身長には、甲状腺ホルモンを補う治療を行い、低栄養による低身長では、栄養状態を改善することによ
り身長の伸びが改善
されます。愛情遮断症候群では、家族関係、特に母子関係の改善が治療の基本です。
治療の対象にならない低身長でも、胎内発育不全(IUGR)性低身長では、成長ホルモン治療の効果が期待できることが報告されています(承認はされてい
ません)(詳しくは「IUGR(子宮内胎児発育遅延)のペー
ジ」へ)。個人的には、承認されることを期待して
いますが、成長ホルモン治療にも副作用があり、慎重な選択が必要になると考えています。
身長を伸ばす生活を心掛けることも重要だと思います。日常生活の中で、身長を伸ばす決定的
な方法はありませんが、こどもが健やかに成長して、心身の成長がさまたげられないこと、そしてすこしでも背が伸びればいいな〜と考えています。
4.
ゆちゆちの場合…
現在、身長はだいたい-2.0SDにすこし届かないくらい、医学的には低身長の分類に入るかも…。だから今すぐ治療が必要か、といえばそうではないよう
です。
10ヶ月健診では、様子を見て、3歳くらいで専門医にかかったらどうか、といわれました。
それでも心配だったので、1歳5ヶ月の時、MoshiMoshi
電話相談室にメールで相談してみました(心配性(^_^;))。そのとき頂いたお返事はおおむね下記のとおりです。具体的には、胎内発育不全性低
身長ではない
か、といっ
たような内容でした。
「確かに小さいですが、まだ1才代ですから、専門医に行ってもしばらくはフォローされ
るだけではないかとは思います。急ぐ必要はないかもしれません。しかし、4〜5才ではきちんと検査を受けたほうがよいかもしれません。小さく生まれて、1
才半までに追いつきにくいタイプの子は成長ホルモンの不足であることは少なく、治療の対象とはならないので低身長のまま推移することが多いので、そのあた
りをフォローしていってもらう必要はあります」
IUGRによる低身長児の場合、低身長(成長障害)の分類にも書きましたが、2歳までにキャッチアップしない場合、低身長で推移することが多いそうで
す。
今から心配しても仕方ありませんが、2〜3歳くらいになったら、一度専門医にみてもらおうかな、と思っています。
追記:2004年2月、2歳になったので、ある病院のメール相談コーナーにメールを出してみたところ、お返事を頂くことが出来ました。
「子宮内胎児発育不全性(SGA)の可能性が高いと思われます。今後、キャッチアップ
してくる可能性もありますが、してこない場合は、かなり低身長に
なってしまいます。今後1〜2年、フォローしながら、キャッチアップしてこなければ、念のため成長ホルモンの分泌不全がないかどうか、検査した方がいいと
思います。(ご心配であれば、ご都合のいい時に受診してください。)もし、検査の結果、分泌不全があれば、治療の対象になりますし、不全がなければSGA
の治験対象(3歳以上)の適応になる可能性もあります。(現在の治験は適応外ですが、今後も治験が行われる予定です。)また、3歳の時点でご連絡下さい」
追記:2005年2月、3歳になったので低身長外来を受診しました。詳しくは2月18日の日記を
みてね!
追記:ゆちの現在の身長が低いか
ら、必ず将来も低い、と悲観している訳ではありません。また、背が低いイコール悪いこと、と思っている訳でもありま
せん。背の低い子、高い子、身長は個性としてとらえてあげたいと思っています。でも、集められる情報は集めたい。できることはしてあげたい。と思ったの
が、このHPを立ち上げたきっかけでした。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
5.
身長を伸ばす生活を考える…
背を伸ばすのは主に成長ホルモンです(他のホルモンも関与していますが)。成長ホルモンは、脳下垂体から分泌され、骨に
働きかけ、背を伸ばします。その他、甲状腺ホルモンも骨を成長させます。性ホルモンも思春期の急激な身長の伸びと関係し、骨を成熟させる働きをしていま
す。
ここでは、成長ホルモンの分泌を妨げないための、基本となることをごくごく(すみませ
ん)簡単にまと
めました。
1. 寝る子は育つ
成長ホルモンは、脳下垂体から分泌されます。その分泌にはリズムがあ
り、夜間に最も多
くの成長ホルモンが分泌されます。「寝る子は育つ」といいますが、まさにその通りです。一番良いのは熟睡すること!熟睡している間に成長ホルモンは最もた
くさん分泌されるのです。
2. 適度な運動
適度な運動は背を伸ばします。運動すること自体が成長ホルモンの分泌
を促します。ま
た、運動すると食欲が増進する、疲れて熟睡する、といいことずくめ!(過度な運動は骨の成長を妨げることがあります)
3. バランスのとれた食事
バランスの良い食事が重要なのはもちろんですが、タンパク質、カルシ
ウムを十分に摂取する必要があります。また、微量元素である亜鉛が欠乏すると身長増
加が鈍ることが報告されています。
4. たくさんの愛情
ストレスによって成長ホルモンの分泌は減少します。愛情遮断症候群と
いって、幼児期に虐待を受け、低身長となる例が知られています。睡眠、運動、食事だ
けでなく、愛情ゆたかな生活も、こどもの背を伸ばす大切な要素です。
参考
文献:
今日の治療指針2003年版 山口徹他編 医学書院
子どもの身長を伸ばす
生活マニュアル 額田 成著 小学館
低身長の最先端医療ガイドブック 田中敏章編著 小学館
【問診、診察、検査、診断の流れのなかで学ぶ小児科診察】成長、成熟、発達の評価 成長の評価(1) 西美和 小児科診
療65巻5号 P.721-72782002.05)
【検査に頼らないで診断するコツ】低身長 田苗綾子
小児科42巻4号 P.468-473(2001.03)
症例から学ぶ成長障害 西美和 小児科診療64巻6号 P.879-885(2001.06)
よくわかる低身長児の診療ガイド 成長障害の診察室から 羽二生邦彦 医学図書出版